こういう人がいた。
「風呂に随分長い事入っていないが、デートに誘われてどうしよう」
私は思った。
風呂に入ればいいのに、と…。
その時、私の思考がすっかりと一般的なものになってしまっていると気付き愕然とした。
風呂に入れないのだって人それぞれ理由がある。
精神疾患などの人にも多い。
私自身の心が弱りきって会社に行けなくなって、働けなかったとき、私は同じような人たちにとても優しくなれた。心から。
そして今、私自身がそこから脱却して、仕事をしっかり頑張っていこうと思っている。
すると、そう思えば思うほど、弱い人の心が分からなくなってきている自分に気づく。
占いの世界は優しい世界だ。
ありのままの自分で良いと教えてくれる。
社会で生きていくという事は、他人に合わせて少し自分が無理をしたりする事も出てくる。
現実的な価値観と、占い的な価値観は少し違う。
現実世界で生きていくためには、折り合いをつけていかないといけない。
強さを身につける必要はある。
でも、それが難しい人がたくさんいて、そういう人が占いの世界には沢山いる。
混沌とした世界。
現実感の薄い場所に住んでいる人たち。
セーフティネットの内側の世界。
彼ら彼女らは、皆とても優しい…。
占い師をしている人にも、このような属性の人は非常に多い。
こういう人たちが持つ優しさに私自身も救われてきた…。
占い師だけでなく占いに来る人もまた、心が弱った人が多く、そういう人に寄り添う優しさが占い師にはあって欲しいと思う。
私は就職してからこの2ヶ月で、自分が社会に適合するために身に着ける殻ができてきたと感じている。
そして自分の中から、優しさがどんどん無くなってきているようにも感じていて、それが少し辛かった。
立場が変わっても、私もフラットな気持ちを忘れないままでいたいと思う。
自分自身を現実的な世界に適応させつつ、昔みたいにあらゆるものを受け入れる感覚も持ち続ける事ができたら良いなと思う。
赦すという事。
否定しない事…。
自分が行きたい場所、目指す場所があるからといって、そうじゃない場所にいる人を否定しているわけじゃない。
私はこうする、というだけの話だ。
境界線を持つということかも知れない。

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